音の基本
耳栓のNRR・SNR。遮音の数字を読む前に
耳栓の箱にあるdBの数字は、そのまま自分の寝室で減る音量ではありません。指標の違いと、比較する前に確認したい条件を整理します。

答えは、数字だけでは決められない
NRRとSNRは、耳栓などの聴覚保護具の遮音を表す指標です。ただし、算出の方法や用いる試験データが異なり、違う指標の数値をそのまま並べて優劣を決めることはできません。3Mが公開する技術資料でも、この違いが整理されています。[1]
たとえば箱の「30」という数字だけを見ても、何を測った値なのかは分かりません。買う前には、数字の大きさより先に、その横の名前と説明書を確認します。複数の候補を比べるときも、まず次の四つを同じメモに書き出してみてください。
- 指標の名称はNRRかSNRか、それ以外か
- 試験方法や試験結果への案内があるか
- 使うサイズ・装着方法・使用場面が説明されているか
- 自分の耳で試す機会や、交換・返品条件があるか
NRRとSNRは、別々の指標
NRRはNoise Reduction Rating、SNRはSingle Number Ratingの略です。どちらも複数の周波数で得られた遮音データを一つの数値にまとめる考え方ですが、同じ名前のものさしではありません。[1]
「NRRよりSNRの数字が大きいから、こちらがよく遮音する」とは判断できません。同じ製品に二つの数値が記載されていても、それだけで表示の矛盾とはいえないのです。このページでは換算式を設けず、メーカーが公開する指標名と試験条件を確認することを出発点にします。
比較表を作るなら、製品名、指標名、表示値、試験情報の所在を別々の欄にします。指標が分からない欄は空白のままにし、販売元へ尋ねます。情報がないことを、性能が高い・低いという評価に置き換えないためです。
部屋の音から、表示値をそのまま引かない
部屋で測った音の値から、パッケージの遮音値を引けば耳元の音が分かる、という使い方は避けます。測定の条件が違い、耳栓を着けた一人ひとりが実際に得る遮音量も表示値と同じとは限りません。NIOSHは、この点を説明しています。[2]
スマートフォンで表示された音量も、耳栓の内側で測定した結果ではありません。「この値なら眠れる」「アラームは残る」といった結論にはつなげないようにします。自分で残すなら、音の種類、聞こえた時間、使った製品とサイズを分けて記録するほうが、次の確認に役立ちます。
装着状態は、数値とは別に確かめる
NIOSHは2025年の方針更新で、職場で使用する聴覚保護具について、個人ごとの定量的なフィットテストを推奨しています。これは、ラベルの数値だけで、その人が得る保護を判断しないための考え方です。[3]
この資料を、家庭での睡眠改善の証明として読むことはできません。また、家で耳を手で覆ったり声を出したりする確認は、専門の機器による定量的な試験とは異なります。就寝用に検討するときは、正しい装着方法を説明書で確認し、枕に触れた感触や着脱のしやすさも別の項目として見ておきます。
気になる音と、必要な合図を書き分ける
一つの遮音値は、あらゆる音への効果を個別に説明するものではありません。英国HSEのガイドでも、SNRを使った職場向けの目安には適用上の条件があり、低い周波数成分が大きい騒音には表が適さないとしています。[4]
寝るときに検討しているなら、空調の連続音、廊下の物音、同室者の声など、気になる場面を具体的に書きます。同時に、目覚まし、家族からの呼びかけなど、気づく必要がある合図も分けておきます。「高い値を選べば全部解決する」とせず、使う場面を販売元へ伝える材料にしてください。職場向けの基準を、寝室の目標音量に置き換えることはしません。
分からないことを、購入前の質問にする
問い合わせるなら、「このdB値はどの指標ですか」「どのサイズと条件で測っていますか」「試験結果は見られますか」と、確認したい項目を短く尋ねます。就寝時に使いたい場合は、その用途が説明書で案内されているかも確かめましょう。
数字を読む目的は、順位をつけることだけではありません。表示から分かることと、まだ自分で確かめる必要があることを切り分けるためです。LOWKEYのイヤプラグも現在開発中です。この解説を、自社製品の遮音性能や快適性を実証する資料として扱ってはいません。
出典・参考資料
- 3M公開技術資料:Comparing hearing protector ratings – NRR, SNR, SLC80, and others(2005年)
- NIOSH:Provide Hearing Protection
- NIOSH Science Policy Update:Individual Fit-Testing Recommendation for Hearing Protection Devices(2025年)
- HSE:Hearing protection
本文の[1]〜[4]は末尾の出典に対応します。3M公開資料は2005年の技術解説で、指標を直接比較できない理由の説明に使用し、規格の現行版や法令の確認には使用していません。NIOSH・HSE資料は職場の聴覚保護を対象とし、睡眠への医学的効果を示す資料ではありません。単純な減算・指標間の換算による実使用の遮音量の推定は行っていません。確認項目は編集部の提案です。出典確認:2026年9月18日。
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