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Issue 01 / 眠り

「寝室を分けてから、会話が減った」

創業12年目の経営者が、いびきと別室と、もう一度同じ部屋で眠るまでの話。

聞き手: LOWKEY 編集部2026年9月読了 8分

「別の部屋で寝て」と言われたのは、3年前の冬だったと彼は言う。都内でソフトウェアの会社を経営して12年、社員は40人を超えた。言われた夜は腹が立ったが、翌朝には納得していた。自分でも、朝の喉の乾き方でうすうす分かっていたからだ。

「最初はむしろ快適でした。好きな時間に寝て、好きな時間に起きられる。出張の前夜は特に。でも半年くらい経って、気づいたんです。家の中で、妻と一日に交わす言葉が減っている」

寝室は、会話の最後の場所だった

寝る前の10分と、起きてすぐの5分。予定のない、目的のない会話は、その15分にしかなかった。それを失ってから、家での会話はすべて「連絡」になった。子どもの送り迎え、週末の予定、修理の見積もり。

寝室を分けるというのは、静かになることじゃなくて、遠くなることだった。

解決策として最初に試したのは、自分のいびき対策だった。マウスピース、鼻のテープ、横向き寝の枕。効果はあったが、続かなかった。「治す側の努力って、監視されている感じがするんです。今日はどうだった?って毎朝聞かれる」

耳を守る、という方向

転機は、妻のほうが耳栓を試したことだった。「彼女が『これなら同じ部屋でいい』と言ってくれて。僕が変わるんじゃなくて、彼女の耳が守られる。その方向があるとは思っていなかった」

同じ部屋に戻って、まず戻ってきたのは寝る前の10分だった。「静かなんですよ、お互い。彼女は耳栓をしているから、僕の声も小さくしか届かない。でも、隣にいるというだけで、会話が要らない会話がある」

いま、彼は会社でも昼に20分眠る。会議室の予定表に「仮眠」と書く。「眠りを恥ずかしがるのをやめたら、いろんなことが楽になりました。眠りの話は、結局、関係の話なんです」

取材対象者の希望により、氏名と社名は伏せています。

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